オンライン授業のための著作権処理ハンドブック

e-Learningにおける著作権処理のFAQ

 利用者の立場Q&A   権利者の立場Q&A   著作物性の判断Q&A  

利用者の立場Q&A

著作物性・アップロード

Q:学長が取材を受けたテレビ番組の映像を就職支援系のe-Learning教材にアップロードしても問題ないでしょうか。

A:例え学長の映像であっても、番組制作者(テレビ局)が著作権を持っていますので、番組制作者かテレビ局に複製・公衆送信の許諾を取る必要があります。


著作物性・子どもの絵画

Q:先日幼稚園を見学に行った際に撮影した園児の描いた家族の絵が、現在作成中の幼児教育のe-Learning 教材のイメージにぴったりでした。勝手に使用しても問題ないでしょうか。

A:例え園児の描いた絵であっても、思想や感情の表現があり、著作物と言えます。園児本人(保護者)に直接連絡は難しいと思われますので、幼稚園にその旨ご連絡をされては如何でしょうか。


著作物性・子どもの日記

Q:附属小学校の児童が書いた日記を初等教育のe-Learning教材として利用したいのですが、児童の書いた日記に著作物性はあるのでしょうか。

A:日記も通常の文章と同じく、言語の著作物として創作性が認められるような表現であれば、著作物と考えられます。直接の教え子さんの場合、該当する児童と保護者に連絡をされては如何でしょうか。教え子さんではない場合、附属小学校経由でのご連絡を考えてください。


著作物性・一発ギャグ 

Q:今年流行りの芸人の一発ギャグを自身が描いたイラストの吹き出しに入れて、e-Learning の所々に入れ込みたいと考えています。所属事務所や芸人に利用許諾申請をする必要はあるのでしょうか。

A:ネタを書き出したノートや芸人がそのネタをもとに演じたもの(表現されたもの)は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」に該当し、著作物に該当すると考えられますが、一発ギャグの短いコメントは、ケースバイケースで、今回の件は著作物とは考えにくいです。


著作物性・キャッチフレーズ

Q:今年流行りのキャッチフレーズをe-Learning のスライドの中に盛り込みたいと思っています。キャッチフレーズを発言している予備校講師に利用許諾申請をする必要はありますか?

A:キャッチフレーズや標語は、ケースバイケースです。一般的には誰が考えても同じようになる短い文章やありふれた表現、単に言葉を羅列し語呂よく組み合わせただけの場合は、表現に創作性があるとは言えませんが、中には創作性を有すると判断される場合もあるので注意が必要です。


著作物性・タイトル

Q:今年流行りの映画タイトルをe-Learning のタイトル副題にしたいと考えています。スライド上で頻繁に表示することになりますが、映画の元となった小説の作家に利用許諾申請は必要でしょうか。

A:タイトルそのものは、一般的に短い言葉や単語であるものが多いので、表現に創作性があるとはいえず、著作物にはならないと考えられます。


著作物性・短歌

Q:附属中学校の生徒が詠んだ短歌を学部教職課程国語科のe-Learning コンテンツの中で掲載し、添削を加えたいのですが、生徒から許諾を取る必要はあるでしょうか。授業の中で紹介し、添削することと同じと考えても良いでしょうか。

A:文字数だけで考えると流行りのキャッチフレーズと同じで著作物ではないとお考えかも知れませんが、短歌や俳句の場合、短い文章の中にも「思想又は感情を創作的に表現した」と言え、著作物となります。短歌をe-Learning コンテンツに掲載する場合、生徒の許諾は必要と考えます。更に添削したものも掲載する場合、同一性保持権の侵害にあたる可能性があり、どのように利用掲載するのか、しっかり生徒に説明をし、同意を得ておく必要があります。


著作物性・複製権・公衆送信権

Q:既存科目のe-Learning を作成中で、本来授業で配布している資料をインラインではありますが、アップロードすることとなります。この行為は著作権法上問題があるのでしょうか。

A:政府による電子教科書の推進があり、今後著作権法も改正されれば、e-Learning も教育の「著作権の制限規定」が適応されるかも知れませんが、今現在(2017年)e-Learning で大勢の学生のために、資料をアップロードする行為は、公衆送信権の侵害・複製権の侵害に当たる可能性が高いです。


著作物性・保護期間・写真

Q:著作権保護期間が切れた数百年前の鎧兜の写真をe-Learning のスライドに使用したいのですが、利用許諾は必要でしょうか。教科書や雑誌などに掲載される有名な鎧兜です。

A:鎧兜その物の著作権保護期間が終了している場合、その写真に芸術性や創作性があれば、著作物となります。また、博物館によっては、所蔵品のデータを使用する場合には、利用許諾を求めていることもありますので、使用されようとしている画像の出典を調べる必要があります。著作権フリーの画像もあるかと思いますので、今手元で使用されようとしている画像にこだわらないことも一つの方法です。


著作物性・保護期間・パロディ

Q:葛飾北斎の日本画の写真集の中から風景画をe-Learningの背景で使用したいという要望が科目担当教員から出ています。できれば、パロディ風な画像へ改変したいそうですが、何か問題はありますか?

A:北斎の没後50年以上経っており、日本画の著作権は消滅していると考えられます。しかし、カメラマンによる光の当て方等、創作性が認められる場合は著作物となります。写真集の写真を使用する場合は、出版社を通じてカメラマンに許諾を取っておくことをお勧めします。また、著作権は消滅していても、著作者人格権が存在するため、作者の名誉を傷つけるような改変はすべきではないと考えます。
【提案1】パロディ風に改変することは諦め、写真集からではなく、ネット上でCCL(クリエイティブ・コモンズ・ライセンス)が表示されている葛飾北斎の画像を使用しては如何でしょうか。
【提案2】パロディ風が重要事項である場合は、背景に葛飾北斎を使用することを諦め、全て自作しては如何でしょうか。


グラフの引用

Q:他の出版物に掲載されているグラフをe-Learning教材に引用したいのですが、どのような手続きをとればよいでしょうか?

A:引用の要件を満たせば著作権者に許諾を得ることなく、図表を利用することができます。ただし、後学の研究者が当該著作物に当たることができるよう、出典元(著作者、題目、雑誌名、発行年、出版社など)を明記するようにしてください。引用の要件を満たさない場合は、著作権者の許諾を得てください。


SNSの引用

Q:Facebook上で不特定多数の人に公開されている画像は、e-Learningコンテンツの画像や動画として、自由に使用しても良いのでしょうか。著作権はFacebookにあるのでしょうか。

A:著作権は投稿者(撮影者)に帰属していますので、利用許諾申請をする場合は、投稿者に申請することになります。権利制限規定を満たしていれば、引用することは可能です。Facebookの「著作権 公正な利用とは何ですか。」には、下記のように記述されています。
「公正な利用の原則では、(中略)そこでこの原則では、一定の状況では許可を得なくても第三者の著作物を利用できるようになっています。一般的な例では、批評、解説、ニュース報道、教育、学問、学術研究などでの利用があります。」(確認日 2017/07/18)


申請方法・Rights Link

Q:Rights Linkで利用許諾申請時に、選択肢として出てくる Are you the author of this Elsevier article ?のElsevier articleは何を意味するのでしょうか。

A:「あなたはこのエルゼビア論文(記事)の作者ですか?」という意味になります。許諾申請者ご自身の論文ではない場合、Noを選択してください。
【参考】
https://www.elsevier.com/ (確認日 2017/07/12)
https://www.journals.elsevier.com/behavioural-processes/policies/ways-to-use-journal-articles-published-by-elsevier (確認日 2017/07/12)


申請方法・学会出版社

Q:第三者著作物をe-Learning上で使用する際、出版社や学会団体にも許諾を取る必要があるのでしょうか。

A:基本的に著作権者が存在する場合、出版社は著作権者と販売権や翻訳権等の契約を結び販売しており、出版社が著作権者でない場合、出版社から利用許諾を取る必要はありません。しかし、出版社に著作権が譲渡されて出版社自身が著作権者である可能性や、著作権者が出版社に窓口を依頼している場合もあり、出版社への確認も必要となります。まず、出版社等に連絡を取ると、後がスムーズかも知れません。


申請方法・連絡先不明

Q:何等かの理由で許諾が取りにくい、取れない状況の場合、どうすれば良いか。

A1:Web上のデータの場合は、そのデータが掲載されているWebのURLを教材に載せ、学生にそこへリンクするように指示をすることで、回避できます。書籍内のデータの場合は、書籍名・作者・出版社を記載し、購入するか図書館で借りるように促します。

A2:著作権者が誰だか分からないが、どうしても現物のデータが使用したいという場合は、文化庁の裁定制度を使用する方法があります。ただし、申請等にお金が掛かります。詳しくは、文化庁のHPをご覧ください。 (確認日 2017/07/12)


写り込み・肖像権

Q:e-Learning コンテンツに使用する予定の動画に、学生が数名写り込んでいます。学生への許諾やモザイク加工等が必要でしょうか。

A:具体的な状況は不明ですが、撮影段階で学生には写り込んでいることの説明やe-Learning コンテンツで使用することの同意を取っているでしょうか。学生個人の連絡先が分かる場合、今からでも肖像権の利用という意味で、同意書を取っておいた方が良いでしょう。連絡先が不明で同意が得られない場合、モザイクで個人が特定できない状態にした方が良いです。


二次的著作物・翻訳権

Q:日本国内の出版社に書籍内にある画像の利用許諾申請をしたところ「うちは翻訳権があるだけ」と言われてしまいました。どうすれば良いでしょうか。

A:翻訳された書籍や小説を映画化したものや既存の楽曲を編曲したものは、二次的著作物と言えます。しかし、例えば翻訳された日本語書籍の中で使用されている画像をe-Learning コンテンツの中で使用したい場合、注意が必要です。日本の出版社に利用許諾申請の連絡をしても「うちは翻訳権しかない」「うちは販売権しかないので、海外の著作者に連絡を」と言われることがあります。たまたま窓口になった方が詳しくない場合は、有耶無耶に許諾を取ったことになる場合もあるかも知れませんが、原作の画像を使用する場合は、海外に許諾申請をする必要があります。


編集著作物・新聞

Q:対面授業で新聞の切り抜き画像をスライドに載せて学生に見せたのですが、来年その授業をe-Learning 化することになりました。対面授業で使用したスライドをe-Learning にそのまま使用しても大丈夫でしょうか。どちらも同じ授業なので、教育の例外規定が適用されると考えて良いでしょうか。

A:新聞、百科事典等、事実を記述しているだけで、一見著作物ではないように感じるかも知れませんが、素材の選択や並べ方に編集者の創作性が現れているものは編集著作物です。対面授業で新聞の切り抜き画像をスライドで紹介することも多いかと思いますが、e-Learning(メディア授業)でのスライドや動画 に、スキャナ画像を掲載する場合は、各新聞社よって対応も異なりますし、HPのサイトポリシーやご利用の注意欄をよく確認する必要があります。

【参考】
日本新聞協会の「ネットワーク上の著作権について」を見る限り、学内のIDパスワードが必要なLMSでの使用も著作権者の承諾が必要とされています。(確認日 2017/07/13)


編集著作物・数学問題集

Q:数学の問題集を丸ごとそのままe-Learningでの小テストに使用したいのですが、著作権上問題があるでしょうか。数学は、定理や公式の組合せですし、著作物にはならないですよね?

A:問題中に記載された定理や数式などは著作物とは言えないと考えられがちですが、問題全体については、定理、数式、問題文等を工夫して選択し配列していることから、その選択と配列によって創作性を有すると認められれば、編集著作物に該当すると考えられます。学習効果等を考えて配列されている問題集をそのまま使用する場合、複製許可について出版社に問い合わせた方が良いでしょう。


編集著作物・地図

Q:e-Learningでの防災教育教材で住宅地図を使いたいのですが、単なる地形という客観的事象を表しているに過ぎないので、利用許諾は不要ですか?

A:著作権法で保護しているのは、地図上に表されている地形という客観的事象ではなく、思想又は感情を創作的に表現した部分です。例えば地下鉄路線図や住宅地図などはその用途に応じて見やすく表現されており、その作成(創作)過程において思想又は感情が表現されていると言えます。よって、著作権者に利用許諾申請をする必要があると考えます。


共同著作物・キャラクター

Q:機械工学のe-Learningでドラえもんの画像を使用したいのですが、ドラえもんのような共同著作物の著作権はいつまで存続するのでしょうか。ドラえもんの場合、藤子不二雄のお一人が亡くなっていますが、利用許諾を取る場合、どうすれば良いのでしょうか。

A:今回ご質問の作品の場合、著作権はお二人がなくなってから50年となり、現在も保護期間中です。本来はご遺族とご存命の藤子不二雄・A氏双方に許諾を取るのが理想ですが、まず出版社と藤子不二雄・A氏に連絡を取られては如何でしょうか。