オンライン授業のための著作権処理ハンドブック

e-Learningにおける著作権処理のFAQ

利用者の立場Q&A   権利者の立場Q&A   著作物性の判断Q&A  

  

権利者の立場Q&A

共同著作物・執筆者変更

Q:大学内の研究室で同僚6人と共同研究をしており、共著が数冊あります。出版社から改訂版の発行の話と共著をベースにしたe-Learning教材化の話があり、研究室では前向きに検討中ですが、うち一人の著者が同意しません。この場合、該当著者が担当する章を別の研究者に執筆依頼しても、何か問題はないでしょうか。

A:改訂版とe-Learningを別々に考える必要がありますが、改訂版がクリアされれば、e-Learning作成も可能になるかと思います。どこを誰が書いたか不明といった共同著作物ではなく、各章独立した構成での書籍の場合、著者の許諾なく利用することはできませんが、今回の場合、執筆者の変更は可能です。同じ内容の改訂版を発行したい場合、執筆者変更の章で必要なデータが、該当著者の物でないか確認が必要ですし、内容や構成を変える場合は、改訂版として整合性があるか、十分検討が必要です。


共同著作物・契約書

Q:大学内の研究室で同僚教員15人と、1科目のe-Learning コンテンツを制作しています。各回を一人が担当し、全15回のコンテンツです。e-Learning 制作室から、代表である私に15枚の「大学への著作権譲渡書」が送られてきました。面倒なので、代表の私一人の契約(署名捺印)で済ますことは出来ないでしょうか。

A:各回が独立した内容の場合、各回に著作権者が存在することになります。まず、委任状をとることとなり、同じ面倒がありますし、代表で契約しても教員は他大学へ勤務となることもありますので、何かあった時に後々まで代表者であるあなたが、連絡を取る必要が生じます。契約は、全教員が個別にしておくことをお勧めします。


対応方法・入試問題

Q:通信教育の会社から、本学の過去の10年分の入試問題で、e-Learning での問題集を作成・販売したいと連絡がありました。どのように許可をすれば良いのでしょうか。何か注意点はあるでしょうか。

A:まず、過去の問題が貴学に著作権があるのかどうか、確認が必要です。素材の選択や配列によって創作性がある場合は、著作物となります。ただ、その過去問題の中に、国語であれば小説等、何等かの第三者著作物が含まれていないかの確認も必要となります。含まれている場合は、それらの第三者著作物の複製許諾も取る必要がありますが、それは、e-Learning を制作する会社に責任を持って取得することを条件にすれば良いでしょう。大学のHP等で過去問題を公開する場合も、同様に第三者著作物の確認・複製許諾が必要となりますので、注意してください。


対応方法・電子書籍

Q:既に出版済の書籍について出版社から電子書籍での発行を勧められています。著者として何か注意することはあるでしょうか。

A:出版社にとって権利として、紙媒体での出版は、複製権が発生し、電子書籍の場合は公衆送信権となります。紙媒体の場合、図書館や知人間での貸出やコピー等で済んでいたかも知れませんが、電子書籍となると、出版社のセキュリティ体制次第で、著作物が広く拡散し、著作者の利益を損なう可能性もあります。どのような状況・条件下での電子書籍の販売となるのか、しっかり契約書を確認する必要があるでしょう。時代の流れとして、紙媒体と電子書籍の同時発行を条件とする出版社も増えてきています。
【参考】
出版権設定契約書ヒナ型1(紙媒体・電子出版一括設定用)一般社団法人 日本書籍出版協会作成 2017


対応方法・マスコットキャラクター公募

Q:大学のマスコットキャラクターとして、学生から公募する予定ですが、キャラクターの決定後に大学と学生間の契約で、著作権の譲渡等、何か注意する必要はあるでしょうか。

A:大学のマスコットキャラクターということは、今後ウェブサイトや行事で使用する着ぐるみ、教材、文具等様々な場面で使用されることが予想されます。著作権を譲渡されていても、学生には著作者人格権が存在しますので、同一性保持権の侵害で後々問題にならないよう、公募のキャラクターをベースとして、改変して使用する旨、譲渡証書に記載しておくと良いでしょう。学生が明るい笑顔のイメージで作成していても、使用する場面によっては、怒っていたり泣いていたりするキャラクターが必要となる場合もありえます。キャラクターの場合、学外での無断使用・販売を防ぐためにも、商標登録もしておくと良いでしょう。
根拠法令
同一性保持権…著作権法第20条
複製権…著作権法第21条


対応方法・著作権侵害

Q:司法試験合格の神様として有名な本学の教授が作成し、授業で教科書として使用している市販問題集が、他大学の法律授業で補助教材として自宅学習用にLMS(学習マネジメントシステム)上で配布されているようです。シラバスには教材として指定されていないようです。著作権侵害には当たらないのでしょうか。

A:教育の「著作権の制限規定」は存在しますが、大講義室の場合数百人規模と考えられ、問題集を丸々コピーして毎回使用しているなら、著作権の侵害に当たると考えられます。著作権法35条1項には「当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合」には、自由な複製はできないこととされています。大学として異議を申し立て、シラバスへの教材としての掲載や生協での書籍販売等で改善が見られない場合は、損害賠償請求を起こすことも考えられます。
根拠法令
複製権…著作権法第21条
差止請求権…著作権法第112条